大流行の食事制限
例えば、糖質制限。ダイエット法として、あるいは糖尿病の予防と改善を目的とした食事療法として、ここ最近ブームとなっています。肥満が万病の元ということで、カロリー制限や脂質制限といったものも以前から存在しています。あるいは肉を食べないという菜食主義やマクロビオティックといったものもあります。
何を食べ何を食べないかに差はあれど、とにかく何らかの食事のコントロールを行うものが食事制限です。
もともと食事制限というのは、肥満による病気の予防や病気の治療が目的でした。
体の仕組みから見れば、日頃の生活習慣から、血糖値のコントロールをしている膵臓(すいぞう)に負担がかかっている人がその負担を軽くするために行うものだと言えます。もしくは、「がん」などのような悪質な細胞を増やさないために対処的に栄養素を制限するということもあります。
いずれにせよ、食事制限をうたった健康法は、体調を崩した人がその症状を改善させるために行った対処療法から生み出されたものが多いのです。
何かを食べたいと感じているのは脳です
今体に必要なものが何で、それが何に入っているのか、どれだけ摂取したらいいのか、脳は知っています。全自動のAI(人工知能)のようなものです。(実際には私たちの脳の方がはるかに高性能です。)
ですから、脳が本来の役割を果たしていれば、そもそも膵臓がおかしくなるほど食べたりしないのが人間なのです。おかしくなっているのは膵臓ではなく、血糖値がコントロールできなくなるほど食べろと指示を出す脳なのです。
食事制限というのは、そういった精妙な体の仕組みを無視して強制的に体に取り込む栄養素をコントロールする手法です。コントロール機能の低下してしまった脳の代わりに知識で補おうとするもの、という意味では食事制限は有効な対処療法と言えるでしょう。
しかし、健康な人が行うことで、逆に身体のバランスを崩してしまうという可能性を秘めているという事実を知っておくことが大切です。
身体に必要な食事は、育った環境やその時々の生活パターン、年齢によっても違います。それを無視して、自分に何が足りていなくて何が多いかも分からず、世間の噂や流行りだけを鵜呑みにした食事制限をすることで、強制的にどこかの数値を下げた場合、それまでの身体のバランスは保てなくなります。その結果、新たなバランスを取るために別のどこかに不具合が生じたり、ホメオスタシスの働きにより反動が起きたりする可能性があるのです。
オプティライフの食事観
食事は頭で食べる(考えて食べる)のではなく、脳の機能を維持するためのケアを施すことで、「本来身体が欲するものを食べたいだけ(適量)食べる」というのがオプティマル(最高最善)だと考えます。
また、忙しく交感神経が優位になりやすい現代社会の中で、楽しくゆったりとできる食事の時間は副交感神経を働かせ、自律神経のバランスを取るという大切な役割も担っています。
好きなものを我慢するというのは、それだけで脳に強いストレスを与えます。また、これは身体にいいとか悪いとか考えながら食べたのでは、食事を楽しむどころか食事の時間でさえ交感神経を働かせることになり、胃腸の働きが悪くなったり、栄養の取り込みが悪くなったり、代謝が落ちたりするのです。
楽しみながら好きでやっている健康法は、どうぞ続けてください。でも、身体のためとか考えながら無理してやっているものがあれば(治療として行っている場合は別)、思い切ってやめることが健康への第一歩となるかもしれません。
食事は単に身体に必要な栄養素を取り込むという作業ではなく、人生の喜びを味わう大切な時間なのです。